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2009.07.03 Fri Kのこと

僅かな月日しか共に出来なかったけど、とっても忘れられない友達がいる。
小学校の時、同じクラスにならなかったせいか1度も言葉も交わしたことがなかったKってヤツがいて、その頃はほとんど気に留めることもなかったし、いつの間にか姿すら見掛けることもなくなっていた。

そんなことすら忘れたまま小学校を卒業し、中学の3年になった時ひさしぶりにKを教室で見つけた。
Kは昔ながらの不良の匂いを漂わせる所謂「一匹狼」的なヤツで、それ故に集団を作る元気のいい奴等からは敬遠されている存在だった。
音楽好きなだけで何も目立つことなく過ごしていた自分と不良っぽいKとでは、全く共通する趣味なども無いように思われたし、実際に初めての会話を交わす日まで少し期間があった記憶がある。
ただ席が近かったのと帰る方角が同じだったため、僕等はいつの間にか話すようになり、それからは放課後よく一緒に遊びに行くようになっていった。


あるときKが「オレって何年か学校に居らんかったの知っとった?」と聞いてきた。
その頃までには噂でKが過去に起した不幸な事件のことを知ってたボクは「知っとるよ」とだけ伝えた。
「そっか」…Kはそのひと言だけ放って、その後1度たりとも言い訳の1つさえも話してくることがなかった。
それにボクも聞き確かめる必要があるとも思わなかった。

Kは学校で見せる孤高の雰囲気とは違って、2人で居る時はボクなんかよりよっぽど饒舌で純粋で、良い意味ガキんちょに思えるヤツだった。

仲良くなるのに月日がかかったせいか早くも卒業式が目前となったある日、それまで音楽の話なんて全然してこなかったKが、「そういえばyuiちゃんって洋楽好きらしかね?古かけどオレはサイモン&ガーファンクルってのが好きとだけどyuiちゃん聴いたことあるね?」と質問してきた。
「もちろん!レコード何枚か持っとるよ」と。
「じゃあ、もしかしたらこれ持ってるかもしれんけど、オレは卒業したら引っ越すけんyuiちゃんにやるよ」と手提げから1枚のレコードを出して見せた。

     S&G'S GH

ずいぶん聴き込んだのか、ジャケットも盤もかなり古めかしく見えた。
「まぁ仲良くしてくれたけんね」と柄にも無くKははにかんで言った。
実は差し出されたレコードをボクは持っていたのだけど、そんな誰も知らないKの心が嬉しくて「あーコレ欲しかったっタイね!」とつい言ってしまった。
きっとKはそんなボクの嘘なんて簡単に見破っていただろうし、そんなこと気にも留めてなかっただろう。

それから僕等は卒業前後の目まぐるしさに紛れてしまい、互いにさよならを伝えることもKの連絡先を教えてもらうこともなく新しい季節が過ぎていった。


ちょうど10年を経たある日、「ここで働きよるて噂で聞いたけん顔出してみた~」とボクが働くお店に突然Kが現われた。
すると「店のイメージがあるからスグ休憩行ってこい」と横にいた店長がすぐさまボクに言った。
昔と全く変わらない笑顔を見せるKにボクは何の違和感を持つことも無かったが、格好はTVドラマでしか見たことないようなド派手なチンピラそのものだったからだ。
店長は「店に難癖つけられないようにしろよ」と小声でボクに言った。
「大丈夫ですよ。では先に休憩入ります。」と伝えてKと店を出た。

止めど無く溢れ出る昔話が時を忘れさせ、僕等の弾む会話が少し途切れた後、Kがポツンと「あのレコードまだ持っとる?」と聞いてきた。
「もちろん今も家のレコード棚に並んどるよ」と言った。
「そっか」…Kはそれだけで十分に満足そうだった。
「yuiちゃんちにもまた遊び行ってみたかったけど、今のオレが行ったらご両親にも迷惑かけてしまうだろうし、実はこれから急ぎでちょっと遠くに行かなんようになってね、もうyuiちゃんに会うのはたぶん今日しかないと思うけん迷惑覚悟で会いに来たとよ」と言うのだ。
Kの瞳の奥が「理由は聞くな」と訴えていたので、「そっか。でも身体だけは絶対大事にせなんよ!絶対だけんね!!」と強く強く言った。

喫茶店を出ると3~4歩前に出たKが「店長にはもうお邪魔することはないですから安心して下さいてyuiちゃんから伝えとって。んじゃyuiちゃんも元気で!」とボクの肩を力強く掴んで、そして足早に人ごみの中へ去っていった。
思い違いでなければ遠くに見えなくなる少し前に、こっちへ振り向いたKが1度だけ手を振ったような気がした。


あれからどうしているんだろう…。
小さくなるKの後ろ姿を見失ったあの時から、月日は幾度も幾度も繰り返され、あの日ボクが働いていた店も無くなり、その後Kの噂も耳にすることはない。


" ...they've all come to look for America... "
あの時の歌は今も聞こえるよ。
そして彼は何処かにあると信じて疑わなかった自由の国を、今もまだ探し続けているのかもしれない。





来週あのハーモニーが再び日本へ。
そして40年前に発売が予定されながらもお蔵入りしていた幻のライブ音源がついに!

    

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